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モーターの進化と応用設計 その1 〜進化編〜

こんにちは。樋詰です。

みなさん、ロボットのキーテクノロジーというと何が浮かびますか?

今日、驚くべき速さで高性能化が進むロボットですが、ぱっと思い付くだけでも次のようなデバイスやデジタル技術に支えられています。

  • 高画素カメラ、画像処理技術と機械学習
  • 膨大な情報を高速で処理するCPUやGPUボード
  • 遠隔操作を支えるサーバーやネットワーク

この他にもたくさんの技術が貢献していますが、最も古くからあるものと言えば・・・モーターです。ugoでもメカナムホイールやアームの関節などで多く使われている重要な部品です。

今回は、そんなモーターを取り上げます。
2回に分けて進化と応用設計についてお送りします。


はじめに

モーターと言えば、これ(下図)です。性能線図です。教科書に必ず出てきます。

思わず引いてしまった貴方、ごめんなさい。でも、ご安心ください。
仕組みや駆動原理の話しは数ある教科書に譲って、本稿では近年のモーターの進化と「それで、どうやって使うの?」にフォーカスしようと思います。

ただ、性能線図について一つだけ。
これを見れば、モーターの性能だけでなく、その種類や用途、さらには搭載される製品や場所まで想像できることもあります。
うなずいた貴方は、きっと経験者ですね。

ところで、この性能線図はugoで実際に評価したあるモーターのデータです。 (ここまで測るとモータは白煙と芳しい香りを放ち、その後使い物になりませんが・・・)

みなさん、次の①~④はお分かりになりますか? 

 ① どんなモーターだろう?(構成、駆動方法、ギアボックス有無)
 ② 何に使えるか?(モーター用途)
 ③ どんな製品だろう?(応用製品のサイズ、重さ)
 ④ 他に分かることは?(製品の特性など)

モーターの歴史は古い

現在多く使われている磁気モーターの原理である『電磁誘導の法則』がマイケル・ファラデーにより発見されたのは、200年も前のことです。静電モータは、さらに70年も前に実験されていたそうです。

デジタル技術も歴史的な礎がある

同じように、デジタル技術の基本となる標本化定理も古くから予想されていました。 ナイキストやシャノンの論文が有名ですが、100年前には複数の学者が証明していたとされています。 その後で勃発した第二次世界大戦では、敵の飛来を探知するためのレーダーが実用化され、大砲の弾道計算や暗号計算のためにコンピューターの開発が加速されました。 現代の飛行機やロケット、原子力、宇宙開発だけでなく、数千年の昔からローマ軍の戦車や投石器など科学を大きく進化させる原動力が軍事利用だったことは大変残念です。

一方で、培われたパルス技術や符号技術は暫く後に民生利用され、1980年代以降身近なところで大きな変化をもたらしました。 PCがオフィスや家庭に浸透しITという概念が新たに誕生し、また音楽CDや動画DVD、デジカメでは高品質なデジタルコンテンツを手軽に楽しめるようになりました。 今や生活必需品となったスマホにはスペクトラム拡散通信方式という無線技術が民生転用されています。「はやぶさ」などの衛星は、これで数億kmの彼方から通信します。

横道にそれますが、デジタル情報を記録するメディアの話を少々。 磁気ディスクや光ディスクはPCとともに発展し、当時の最先端技術が使われていましたが、ユビキタス時代の到来とともに出番が減り僅か20年で主役の座をネットワークに譲りました。その変化に近くで接していた身にとっては大きな驚きです。もっとも古い記録メディアである磁気テープがクラウド時代の要であるデータセンターで活躍していることは、また興味深いものです。

最新モーターって、すごい

話をモーターに戻すと、そういった技術進化の恩恵をモーターも享受しています。 ファラデーの時代からある基本原理や構成は現代のブラシモーターでも立派に通用する一方で、ブラシレスモーター(BLDCモーター)は桁違いの進化を果たしています。 MOS技術をはじめとする半導体の進化がそれを可能にしたと思います。

  • FETのスイッチイング性能の向上(超低Rds、高速Ton/Toff)
  • ベクトル制御の普及(高効率で静か、演算負荷が大きい)

駆動方法では、三相矩形波駆動→正弦波駆動→ベクトル制御の順に性能が改善されることは以前から知られてはいましたが、ロジック回路やFETドライバ回路に使う半導体バイスの進化を待たねばなりませんでした。

三相矩形波駆動(実測波形)
黄→水色→青と順番にコイルを励起し1回転。 各コイルは数10msのオフ時間があり、音や振動につながる。

正弦波ベクトル制御(実測波形)
各コイルには、ローターの回転ベクトルを分解し計算結果応じた電流が連続して流れる。きれいな正弦波で駆動される。

以上のように技術シーズが揃ったことで、BLDCモーターは効率が良く、静かになり、小型化と低価格化が進みました。

もう一つ、大事なことがあります。ニーズ、すなわち明確な応用領域の存在です。 自動車産業ではBEV(バッテリーEV)、ロボットではドローンや空飛ぶクルマといったパラダイムシフトを伴うような製品の民生利用が同じタイミングで進行しました。


今回はモーターの進化についてお話ししました。 次回は実際にロボットへの適用についてのお話しをします。 乞うご期待!

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